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「柚希が恋しくてきちゃった♪」
「んと…仕事はどうしたんだ?」
「うまいこと調整して早く切り上げた。柚希といっしょにいたいからね!」
俺を抱き締めたまま、奥村敬一は…敬一は楽しげに仕事の話をする。その顔はまさしく恋する若い男のそれだ。優しい笑顔を見るとドキドキしてしまう。
「敬一、ちょっと、離せって」
「おっと。柚希は恥ずかしがり屋だから、離さないと」
「からかうな」
*
なんで一ファンの俺が敬一と『恋人』になったか。それは約八ヶ月前、俺が敬一のライブに行った日。俺は他のファン達と同じように敬一が踊り歌う姿を堪能していた。ライブが終わり特別な時間の余韻に浸りながら帰ろうとすると、俺は声をかけられた。
「すいません、ちょっと…」
「な、なんですか?」
目の前に敬一がいる。しかも肩を触れられている。緊張とドキドキで困惑した。しかも、ライブレポート終わってほとんどのファンが退場して人は少なく、ほぼ二人きりだ。
そして、敬一の口からとんでもない発言を聞くことになった。
「一目惚れしました。好きです」
俺はいきなり告白された。ずっと追っかけをしていたアイドルの告白を断る理由なんか見つからず、すぐ受け入れ現在に至る。
*
そのライブ以来、敬一は俺のために時間を作ってはここに来るようになっていた。
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