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「今日もドラマの収録大変だったよぉ~。オレの父親役の人が怖いし、台本の台詞難しいのばっかりだしー」
「お、お疲れ様」
「でも柚希の顔見たら元気出たよ!柚希可愛い」
可愛いと言われてどう対応すべきかわからない。
好きなアイドルと秘密の恋愛関係。世の中の女の子達にとっては憧れのシチュエーションだろう。でも、俺は少しもやもやしてしまう。どうも何かが違う気がする。
俺はアイドルオタクだ。
アイドルの追っかけはあくまで趣味であり恋愛感情ではない。くどいようだがオタクが趣味に向ける想いは恋のようで恋じゃないんだ、あくまで趣味だ。
敬一は間違いなく俺に恋しているのに、俺は…
「なあ、敬一はこの部屋見てどう思う?気持ち悪くないのか?」
さっきも説明した通り俺の部屋は完全にアイドルオタクのそれだ。アイドル自身が見たら間違いなく引くだろう。しかし、敬一は違った。
「気持ちわりぃなんてないよ!オレ愛されてるんだって感じで!むしろかっこよすぎる!」
「…俺のこと気持ち悪いオタクだとは?」
「?人を好きになるっていいことじゃないか?柚希は気持ち悪いどころか、すっごく可愛いよ!!」
社内での女子ウケも悪くて地味でちょっとデブな俺の何がいいんだろう。
「おっー!これ、限定マグじゃん!数量限定だよ?すっげ!」
自分のグッズが溢れたオタ部屋を敬一は楽しそうに漁る。ここに来ると必ずこれだ。
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