act.1 アイドルとドルオタ

8/10
前へ
/24ページ
次へ
*  敬一の腕の中で目が覚めると夜十時。あれから結構寝てたんだな… 「柚希、」 敬一も目を覚ます。 「…はっ!敬一!仕事大丈夫!?」 完全に目を覚ますと現実が過る。敬一はアイドルだと思い出す。 「大丈夫だよ?明日の仕事は昼からだから」 「もー…予定とかちゃんと連絡してよ。飯とか作るのに」 「あははっ!予定しょっちゅう変わるから連絡入れずらいんだよなぁ」 応援しているアイドルは俺を振り回して愛してくれる。これが、今は幸せ。 「柚希がいるから、オレ仕事頑張れるんだよ。こんな可愛い恋人がいるから…」 可愛いとは言われなれてなくて恥ずかしくなる。 やっぱり、どうしても申し訳なくなる。 俺の気持ちが、自分の気持ちなのにはっきりしないのが… 「敬一…俺やっぱり自分の気持ちがはっきりしないんだ」 「何?」 「敬一が俺のこと好きな気持ちは間違いなく恋愛感情だろ?」 「もちろん。柚希にドキドキしてるのは間違いないよ」 「なんかそれ俺にはもったいないよ」 敬一が優しくしてくれるたびにこれでいいのか?と考えてしまう。幸せだけど、少し不安なんだ。 敬一は頭を撫でる。 「オレをこんなに幸せだって思わせてくれるのは、柚希だけだよ。ただそこにいるだけで幸せだって思わせてくれるってすごいよ。だから自信持って」 「…」 ここにいる敬一はアイドルじゃなくて一人の恋人を愛する人だ。アイドルじゃない彼の姿を見てどうも複雑だが、やっぱりドキドキする。 「…次のサイン会は必ず行くから、それまでしっかりしてなよ?」 「わかった♪ありがとう」 『好き』のベクトルは違ってて、 時々妙に噛み合ってないけどやっぱり敬一に夢中な俺だった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加