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樹くんと会うようになって何日経ったかな。ついこの間ゴールデンウィークが終わったばかりだったのに、もう梅雨に入ってしまった。
「涼太くんごめんね、雨なのに突然呼び出して」
「ううん、大丈夫。ちょうど暇してたし」
俺は今日も樹くんと会っている。ここ最近は特に頻繁に会うようになった。
いつも樹くんから誘ってくれるのは嬉しいんだけど、樹くんなら他にも友達がたくさんいるだろうに、俺なんかとばかり遊んでていいのかな。でも誘ってくれてるのに断るのも何だか気が引けるからいつもオーケーしてるんだけど。
「用って程の事は無いんだけど、涼太くんの顔が見たくなったから、かな」
「なんだよそれー」
会う度に樹くんの言動が怪しくなってきてるんだよな……距離も近いし、軽いボディタッチも増えてきた。
相手は恩人だし、樹くん自身は良い人だから邪険にする気は無いんだけど、毎回結構びっくりしてたりする。
それともう一つ気になるのは――
「ところで涼太くん、この髪、生え際だけ黒くなってる。こまめに染め直さないとだめだよ」
最近少しずつ俺に厳しくなっていってる事。気のせいだと思うけど、こういう時の樹くんは少し声が低くて、笑顔も冷たい気がしてちょっと怖い。
だけど優しい樹くんの事だ、きっと俺の為を思ってわざと強めに言ってるんだろう。そう信じているから、俺はいつも頷いて終わらせる。
「涼太くんは元々大人しいんだから、見た目だけはしっかり整えておかないと、ただのだらしない人になってしまうよ」
「う……そうだね、ごめん」
時々マジでグサッとくるような事も言ってくるんだけど、間違った事は言ってないし、これで樹くんに対して嫌な気持ちになったりはしない。
「じゃあ涼太くん、今日もありがとう。またね」
「うん、また」
適当に遊んだ後は現地の駅で解散。樹くんとはいつもこのパターンだ。だから樹くんがどこの駅を使っているのかも未だによくわかってない。
だけどきっと男同士なんてそんなもんだ、康平が異常なんだよ。男の俺をわざわざ家まで送ってくれるとか。……まぁ嬉しいっちゃ嬉しい、大事にされてるって感じがして。
そういや最近の俺、いつも一人で帰ってんな……。
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