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その時、ふと背後の足音が気になった。それは家の最寄り駅を降りてからずっとついてきてるんだけど、俺が曲がれば同じ方向に曲がるし、俺が止まれば止まる。なんかちょっと……いや、かなり不気味だ。
勇気を出して後ろを振り向いたけど、閑静な住宅街には帰宅途中の人がいるだけで、特に怪しい奴はいなかった。
「康平か?」
一番心当たりのある奴の名を呼んでも出てこない。やっぱ気のせいか。だけど怖いから念の為速足で帰った。
そして翌日、学校で康平に問い詰めてみると、残念ながら今回もついてきてないって言いやがる。
「マジかよ……」
そこはついてきてたって言えよ。
「なんだよ涼太、もしかしてまたストーカーされてんのか? クソッ許さねぇ! 一体誰が涼太を……!」
「いやたぶん気のせいだから。あと、前までのストーカーはお前だからな」
だからびっくりした顔すんな。「またまたーご冗談を」じゃねぇ。
まぁでも、あの足音は本当に気のせいだったのかもしれない。うん、そういう事にしておこう。
「涼太、心配すんなよ、お前の事は俺が命を懸けて護るからな!」
「どうもありがとう。命なんて大層なものは懸けなくていいです」
俺の肩に手をやって真っ直ぐ言い切る康平はとても頼もしい。だけど、その言葉は半分ノリなんじゃねぇかな。だってこいつ最近俺に冷めてんだもん。
「そうだ涼太、今日の放課後暇? 久々に遊びに行かね?」
「え……なんかあんの?」
思わずポカンと聞き返すと可笑しそうに笑われた。
「なんかあんのって、普通にデートだよ。なんでびっくりしてんだよー、ウケるー」
なんでなんて、理由は一つしかねぇよ。
「……いや、だって康平、最近俺に冷めてんじゃん」
「はっ!? えっ!? さめ……えっ、なんで!?」
突然康平は慌てだした。それほど俺の言葉が予想外だったらしい、わかりやすいくらいテンパって、何故か俺の顔や肩や背中ををぺたぺた触ってくる。
ひとしきり触って落ち着いた康平は不安げな顔をしていたけど、俺と目が合うとすぐ拗ねたように眉を寄せて、唇を尖らせた。
「つーかさ、どっちかって言うと涼太のが冷めてんだろ、いつもいつも例の友達と遊んでるしさ」
「はっ!?」
マジかよオイ。それを言うか貴様、そっちがそれを言うなら、こっちだって真っ当な言い分があんぞコラ。
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