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「それはお前っ、お前だってめちゃくちゃ嬉しそうに行け行け言ってたろうが!」
昼休みの教室内だというのに思ったよりでかい声が出て、周りが一斉に俺らに注目した。
多くの視線に少し怯んだけど、それどころじゃねぇと考えて康平に向き直った。
樹くんと連絡を取り合ってから今日までの約一ヵ月間、ずっと溜めてきた鬱憤をここで晴らしてやる。
「きっと俺と遊ぶのが面倒になってたから、ちょうどいいやとか思ってたんだろ!」
やべ、ちょっと泣きそう。
声に出すと改めて実感する、俺はやっぱり康平が好きで、俺からキスした日以来ちっとも嫉妬しなくなった態度が悲しいんだ。
グッと歯を食いしばって涙を堪えて正面を見ると、康平はその顔で驚愕をあらわにしていた。
「ンなわけねぇだろ! うっそだろお前、そんな事思ってたのかよ、ビビったわ!」
信じられないといったふうに髪をかき上げる康平の様子を見るに、口から出任せを言っているようには思えない。
だけど、無意識に……っていう場合もあるだろ。
「いざ自分のもんになったらどうでも良くなったんだろ」
泣くのを我慢しているせいで声が不自然に震えた。
出会ってから今までずっと康平は俺にまとわりついてきてて、それが当たり前だったのに、今はこんな喧嘩をしてるなんて……終わりって案外あっけないんだな。
こんな事なら、もっとちゃんと好きとか言っておけばよかった。
あ、ヤバい……こんな事考えてるから涙が零れて――
「え……?」
この時俺が呆けた声を出した理由は一つ、康平が俺の涙を指ですくったから。
何泣いてんだよって笑って、頭をガシガシ撫でてくる。
「涼太くんよぉ、俺が今まで散々ストーカーしてきて、キスしたり色々してきたのにさ、それでも俺の気持ちは全然伝わってなかったのかぁ?」
あやすように優しく、そしてリラックスさせるように朗らかに康平は言った。そのお陰で、感情的になってた俺はすうっと落ち着きを取り戻していく。
だけど一つ聞き捨てならない台詞が。
「お前今ストーカーっつったな、とうとう認めやがったなコラ」
涙も引っ込んだわ。言質取ったぞおい。明後日の方向見てんじゃねぇ、もう言い逃れできねぇぞ。
「おいコラすっとぼけたツラしてんじゃねぇ!」
「……とにかく」
「話逸らすな!」
「とにかく、俺の気持ちはずっと変わんねぇよ」
良い事言って誤魔化す気だなこいつ。
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