樹くんは恩人なのに

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 つか普通に注目浴びてるわ。写真撮られて晒されるる前に退散しときますか。 「行くぞ康平」  手を繋いだまま俺らはその場をあとにした。  隣の康平を見上げると、ずっと散歩中の犬みてぇにキラキラした顔をしていて、俺の言葉一つでこんなに喜んでくれているんだと思うと胸がくすぐったくなる。 「やっぱ俺には康平だな」 「ん? 涼太なんか言ったか?」  しみじみ呟いた言葉は康平には聞き取れなかったらしい。 「別にー? 康平の事が好きって言っただけ」 「めちゃくちゃ良い事言ってくれてた!! マジで今日どしたんだよ涼太、デレ具合半端なくね!?」  久し振りに康平と歩く帰り道は、一人で帰っていた時よりずっと明るく感じた。 「今日も送ってもらって悪いな、ありがとう」 「愛しい涼太の為ならお安い御用だぜ! またいっぱい遊ぼうな」 「ん!」  その言葉通り、この日からしばらくは放課後と休日を含めてほぼ毎日康平と遊び倒した。  とはいえ基本的に金が無いので、大半はどっかの公園とかお互いの家で喋ったりゲームしたり漫画読んだり。梅雨時で外に出るのも億劫なのに、来る日も来る日も飽きもせず。まるでここ一ヶ月の穴を埋めるように二人で過ごした。 「お義母さん、お初にお目にかかります、康平と申します。涼太くんにはいつも仲良くしていただいております。こちら、つまらないものですが……」 「あっははははっ! やべぇっ、お前誰だよ!」  初めて俺ん家に来た康平が、ご丁寧に腰を90度曲げて深々と頭を下げながらお母さんに菓子折り手渡してた時は、さすがに笑いすぎて呼吸止まるかと思ったわ。  でもそのお陰でうちの家族からの康平の印象は、見た目はアレでも今時しっかりしている律儀な良い子、となっている。まぁあいつコミュニケーション能力高いしな。  それとこれは至極当然の事だと思うけど、思春期で恋人同士の俺達が部屋で二人きりになっていると、自然とそういう雰囲気になったりもする。
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