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魔城カンターン。魔族と瘴気が支配する、我が魔軍の象徴にして総本山。
魔以外の侵入を拒み、魔の者に加護を与える。そんな魔軍の最終戦線のその最奥に、我、魔軍総統改め、魔王ゼフィオムはいた。
招かれざる来訪者達と共に。
「ぬぅんっ! 滅せよ、魔帝覇軍掌ッ!!」
右手に魔力と瘴気を込め、撃ち放つ。そうすれば常人ならば触れるだけで溶解する常闇の波動が怨敵目掛けて放たれる。
だが忌々しいことに、それを素直に受けるほど容易な相手ではなかった。
「させませんっ! 神浄結界!」
修道服を着た聖女と呼ばれる小娘がそう叫べば、連中の周囲に目障りな青白い光の壁が出来上がる。それは我が瘴気を弾き、猪口才にも防いで見せた。
「ありがとうセレーナ!」
「勇者様! 油断なさらぬようにっ!」
小娘と、我が怨敵たる勇者が言葉を交わす。忌々しいことこの上ない。
「フュリウスばっかにいいかっこさせるかよっ!」
「援護します」
結界とやらの後ろに下がった勇者と入れ替わりに、人間の剣士と魔術師が攻め入ってくる。
こちらは勇者や小娘と比べて特異な力は持っていないものの、その剣技と魔技の錬度はなかなかどうして侮れない。
「オルァッ! 破砕錬剣っ!」
「炎鬼精霊よ、力を貸し給え……ヒュペリオンプラズムッ!」
「温いわッ! 絶明棺ッ!」
裂気を乗せた剣士の一撃を魔剣で受け、その背後から迫る灼熱の閃光を闇の重引力で飲み込む。
渾身の一撃をあっさりと対処されたことが衝撃であったのか、そいつらは確かな隙をさらけ出した。
「ふぅん! 冥刻刃!」
魔剣に魔力を乗せ、剣士を吹き飛ばす。吹き飛ばされた愚か者は、為す術なく魔術師を巻き込んで地に転がった。
しかしなかなかに頑丈なようで、致命傷は与えられなかったようだ。
だが力の差は歴然。いかに人間共の中で腕利きだろうとも、魔の王たる我に及ぶべくも無い。
もし仮に我に比肩する者がいるとすれば、それはただ一人……
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