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「ゼフィオオオオオムッ!」
未だ残る瘴気を突っ切り、勇者が迫る。
いかに勇者といえど、人間が耐えられるモノではないはずだ。どうやって突破したのか。
その疑問はすぐに解消される。勇者の身体が淡く光っていた。つい先程、同じ光を見たばかりだ。
「聖女の小娘の力かっ……!」
拙い。不意を衝かれた上に剣士共の相手をしたばかりで体勢が整っていない。
だがこれはチャンスでもある。我であれば聖剣の直撃を受けようとも、1撃2撃では致命傷となりはしない。
逆に我を攻撃した後の隙に、全力の魔力と瘴気を込めて熔滅させてやろう。所詮、我が力の真髄を受けて命を繋げる生物などこの世にいないのだ。
腹を決め、勇者の攻撃に備えて身構える。だが、迫る力の奔流は我の想像を超えていた。
「――こ、この力は……っ!」
「仲間から預かった力だ……! 終わらせるぞ……これでっ!!」
辛うじて魔剣で受けたものの、あまりの力に圧され、一歩、後退する。
それが決め手となったのか、或いは結末を暗示したのか、魔剣に罅が入る。
「エクセリオン……ブレイドォオオオッ!!!」
瞬間、視界が光に覆われる。それは魔族が最も苦手とする聖気。
視界どころか空間全てを覆うほどの聖気の奔流は、著しく魔の力を減衰させる。それは我や、我の魔剣も例外でなく、魔剣は砕けて散った。
もはや我を守るものはなく、その聖気と聖剣の一撃が、我を飲み込んだ。
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