居酒屋マルチェ

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ここで店を構えたのは3年前。 高校を卒業してからこの世界に入った。お酒のこともろくに知らないが時給がいいからという理由で居酒屋のアルバイトを始めた。それから料理に興味を持ち、独学で学んだ。1回落ちたが調理師の免許を取り、お酒が飲めるようになってからはカフェバーを掛け持ちして酒類の勉強もした。 しかしお酒と言っても幅が広すぎて、手を出すときりがないと思いこれは挫折。せいぜいワインの産地によってこんな感じ~とソムリエの足元にも及ばない一般人の知識があるくらい。 しかし居酒屋の店長に連れて行ってもらった日本酒バルで衝撃的な出会いをした。 日本酒なんて悪酔いするイメージがあったから敬遠していたが、そこの日本酒はどれも口当たりがよくすっと引く。白ワインのようにフルーティーな香りがするものがあれば、独特な香ばしさで熱く残るものもあった。うっかり飲みすぎたと覆ったが、次の日二日酔いはしなかった。 「いい酒は残らないんだよ。」 それから日本酒にはまっていったが、これもワインと同じく産地で全然ものが違う。そして全国どこでも地酒があり、日本酒検定や利酒師なんかの資格もある。ここでまたもや勉強嫌いの性が出た。 その頃やっと貯金が目標達成できたので、自分の店を出す目途が立っていた。どんな店にしようか具体的に決めていなかったが、友達と行った飛騨高山の旅行で出会ったあの日本酒が決め手となった。 これに合う居酒屋にしよう。
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