春のおとずれ

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バレンタイン....そうか今日は14日か。 「どうしたの?? また、なんか考えてる?」 見ると由衣は、いつの間にかしゃがみ 込んでせっせと雪だるまらしきものを作っている。 『 また、って何だよ。寒いんだよ』 俺もしゃがむと、目の前の雪の塊の上に、掴んで丸くなった雪を乗せる。 由衣はフフッと笑うと、ポケットから カイロを取り出し、それを俺の膝の上に乗せた。 「....何か、いつも色々教えてくれて ありがとね。 私まだ、レジくらいしか出来ないし。 他のこと....やってもらったりばかりで。」 由衣はチョコペンの先を折り取る。 「....雪だるまに顔を描くと、可愛いと思わない?」 雪だるまがニコニコと笑い始めた。 俺はペン先から出てきた柔らかいチョコをそのまま食べる。 由衣も笑う。 甘くて温かいものが、くちいっぱいに広がっていく。 ーーいつの間にか人の往来の気配を感じ はじめていた。
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