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「わ、私の職業は魔導師で、主スキルは魔法陣、副スキルは調査……です」
夢咲さんは名門女子中学の桜ヶ丘学院の制服を着ているツインテールの女の子だった。
こんな所でこんなことを考えるのは不謹慎かもしれないが、夢咲さんはとても可愛い。この中で一番可愛いんじゃないだろうか。如何にもか弱い女の子という感じで、守ってあげたくなるタイプの女の子だ。
「魔法陣はどうしてかは分かりませんけど、一通り頭の中に入ってます。それを頭の中に思い浮かべて、魔法陣を出したい場所を10秒間見つめるとそこに魔法陣が現れて、攻撃したり、回復したり出来るみたいです。調査は調べたいものを見るだけのようです」
夢先さんは分かりやすく、魔法陣と調査について説明してくれた。
魔法陣と調査かあ。
かなり便利そうなスキルだ。回復と攻撃と調査が出来ればもう言うことなしだろう。
「おおーー。便利なスキルじゃねぇか」
江田の顔からさっきまでの不機嫌そうな表情は抜けきっていた。
次は俺の番か。
結局夢咲さんのスキル説明を聞いてしまい、自分のスキル説明について考えられなかった。
「じゃあ次は君」
もちろん俺が指名される。
「俺なんですが、職業は村人でスキルは……ありません」
俺は堂々とそう言い切った。
嘘を吐くのは少しは心が痛むし、スキルがないとは言いにくい状況だが、こう答える以外の選択肢が俺にはなかった。
「ない……って本当に? 」
「はい」
峰川さんや皆は驚いているようだ。この状況じゃ皆スキルを持ってるって普通は思うよな。
「異世界来てスキルなしとか悲しすぎるだろ」
江田達は嘲笑的な笑みを浮かべている。
悔しいが何も言い返せない。
江田達以外の人も憐れみの視線や訝しむような視線を投げ掛けて来る。この空気が息苦しい。
俺の次の人、早くスキル紹介をしてくれ。
「じゃあ次は君」
峰川さんが次の人を指名すると皆の視線は自然とそっちへ行く。
助かった……。
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