序章

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序章

世界4大王国の一つ魔道王国カムソウル その国土は広く北の大地にあり、深い森と冬には流氷の浮かぶ海に囲まれた国である。 国土の約3分の1は年中氷に閉ざされた凍土であり、高い山々がそびえ立つ。 人々が足を踏み入れない極限の地は、世界中から神々の住まう神聖なる領域として称えられている。 事件は、王都カムソウルから馬車で半日ほど、北へ続く山脈の入口にある山の中腹辺り。 冬は雪に閉ざされる、山間の小さな町。フロウ。 夏の出来事である。 初夏。小さな山間の村では毎年まとまった雨が降る。 雪解け水が長年をかけて作りだした深い谷と、谷を囲む高い山々。 谷のふもとの小さな町では、谷のおかげで川の氾濫の心配はないものの、 交通の要所である、谷沿いの街道の崖崩れは毎年の心配であった。 今日もまた雨が降っている。 もう、雨が降り続いて10日になる。 「いいかげん、止まないと畑が死んじまうよ。」 とある民家の軒先。3人の女性が話している。 雨は叩きつけるように降り続け、地面にいくつもの小さな川を作り出していた。 「畑どころか、あの深い谷でさえ水が半分を超えて流れてさ、町ごとこのまま流されるんじゃないかしら。」 「崖崩れも今年は起きそう…。」 3人は不安そうに空を見上げる。不安と同じくらい灰色に沈んだ空は、 一向に晴れる気配はない。 そして、町の西。隣町との唯一の街道。 その日の夜のうちに地響きをたてて崩れ、道を塞いでしまった。 それから3日3晩激しく雨は降り続き、少しずつ道を塞いだ土は谷へ流され ようやく、雨の上がった時。崩れた崖後にはぽっかりと洞窟の入口があいていたのだった。
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