0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
序章
世界4大王国の一つ魔道王国カムソウル
その国土は広く北の大地にあり、深い森と冬には流氷の浮かぶ海に囲まれた国である。
国土の約3分の1は年中氷に閉ざされた凍土であり、高い山々がそびえ立つ。
人々が足を踏み入れない極限の地は、世界中から神々の住まう神聖なる領域として称えられている。
事件は、王都カムソウルから馬車で半日ほど、北へ続く山脈の入口にある山の中腹辺り。
冬は雪に閉ざされる、山間の小さな町。フロウ。
夏の出来事である。
初夏。小さな山間の村では毎年まとまった雨が降る。
雪解け水が長年をかけて作りだした深い谷と、谷を囲む高い山々。
谷のふもとの小さな町では、谷のおかげで川の氾濫の心配はないものの、
交通の要所である、谷沿いの街道の崖崩れは毎年の心配であった。
今日もまた雨が降っている。
もう、雨が降り続いて10日になる。
「いいかげん、止まないと畑が死んじまうよ。」
とある民家の軒先。3人の女性が話している。
雨は叩きつけるように降り続け、地面にいくつもの小さな川を作り出していた。
「畑どころか、あの深い谷でさえ水が半分を超えて流れてさ、町ごとこのまま流されるんじゃないかしら。」
「崖崩れも今年は起きそう…。」
3人は不安そうに空を見上げる。不安と同じくらい灰色に沈んだ空は、
一向に晴れる気配はない。
そして、町の西。隣町との唯一の街道。
その日の夜のうちに地響きをたてて崩れ、道を塞いでしまった。
それから3日3晩激しく雨は降り続き、少しずつ道を塞いだ土は谷へ流され
ようやく、雨の上がった時。崩れた崖後にはぽっかりと洞窟の入口があいていたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!