恋をした『スニーカーの神様』

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そんな日が幾日か経ったある日、男は意を決し彼女に嘆いている訳を尋ねようとしてハッと我にかえった。 何故なら彼は─── 足元こそ白くて綺麗なスニーカーを履いているが、それ以外は自分でも感じるくらいの異臭を放ち、ボサボサの長い髪に髭、汚れや黄ばみが目立つその姿は『浮浪者』のようだからだ。 いつもならばそんな事はお構い無しで、誰にでも唐突な事を仕出かす男なのだが……。 「…………コレデハ彼女ニ相応シクナイ」 そう感じた彼はその日から必死に自らを変えた。 まずボサボサの長い髪と髭を切り、汚れや黄ばみだけでなく、殺菌と消臭も兼ねて自ら全身を薄めた塩素系漂白剤に浸かり、浸かることの出来ない頭と顔……否、全身を中性洗剤で綺麗に洗い、ぬるま湯に浸かり身をしっかりと清め、野原に寝転び天日干し。 それを何回も、何日も何週間も続けた。
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