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「俺らが話しかけた後で、すぐ帰宅していたけど、
雰囲気悪くしちゃったかな?ごめんね。」
あの日以来の菊池さんの一言。
職場の休憩スペースでたまにはジュースでも…と
フラフラしているところに声をかけられた。
菊池さんは多分タバコ休憩をしてきたんだろう。
少し匂いがする。
たばこの匂いは少しだけ残るお父さんの思い出。
それ以降出会う人に喫煙者はあんまりいなかった。
「いえ。かえって助かりました。
やっぱり高校の時に仲良くても、時間が過ぎると
違和感半端なくて…居心地悪かったんです。
今度はもっと少人数で会おうね…って話になってます」
少人数…と言うよりは、『更紗抜き』なだけだけど。
「へぇ…坂崎さんって、そう言う線引きシビアだね。
女子って、もっとさ『一人になりたくないからとりあえず…』
みたいな関係性じゃん。」
女子の雰囲気…よくご存じですね。
多分、更紗がそんなタイプだ。
「どうだろう?私の周りはそんな雰囲気あんまりないですけどね。
まぁ…私の前で見せないだけかも知れませんけど。
私は元から、こんな感じなので、」
「ははっ!そっか。でもそう言うしっかりした所
好感度高いよ。後輩にも坂崎さん含めて飲み会したいって奴
結構いるしね。」
また始まった。飲み会話。
「あー--。それはまたの機会に。」
「でたー。常套句。いつもそうやって『またの機会』なんて無いって
聞いたよ。」
誰に聞いたのやら。私のいないところで私の話をされるのは
苦手だけど、それをいちいち気にしていたら、
私の精神が持たない。
手にしたジュース一口含むと、
菊池さんはポケットにしまっていたコーヒーを開けて
ぐびっと飲む。
甘いコーヒーは好きだけど、
微糖だの無糖は苦手。
そうしていると、階段を松井さんが昇ってくるのが
視界の端に見えた。
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