10/29

255人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
「俺らが話しかけた後で、すぐ帰宅していたけど、 雰囲気悪くしちゃったかな?ごめんね。」 あの日以来の菊池さんの一言。 職場の休憩スペースでたまにはジュースでも…と フラフラしているところに声をかけられた。 菊池さんは多分タバコ休憩をしてきたんだろう。 少し匂いがする。 たばこの匂いは少しだけ残るお父さんの思い出。 それ以降出会う人に喫煙者はあんまりいなかった。 「いえ。かえって助かりました。 やっぱり高校の時に仲良くても、時間が過ぎると 違和感半端なくて…居心地悪かったんです。 今度はもっと少人数で会おうね…って話になってます」 少人数…と言うよりは、『更紗抜き』なだけだけど。 「へぇ…坂崎さんって、そう言う線引きシビアだね。 女子って、もっとさ『一人になりたくないからとりあえず…』 みたいな関係性じゃん。」 女子の雰囲気…よくご存じですね。 多分、更紗がそんなタイプだ。 「どうだろう?私の周りはそんな雰囲気あんまりないですけどね。 まぁ…私の前で見せないだけかも知れませんけど。 私は元から、こんな感じなので、」 「ははっ!そっか。でもそう言うしっかりした所 好感度高いよ。後輩にも坂崎さん含めて飲み会したいって奴 結構いるしね。」 また始まった。飲み会話。 「あー--。それはまたの機会に。」 「でたー。常套句。いつもそうやって『またの機会』なんて無いって 聞いたよ。」 誰に聞いたのやら。私のいないところで私の話をされるのは 苦手だけど、それをいちいち気にしていたら、 私の精神が持たない。 手にしたジュース一口含むと、 菊池さんはポケットにしまっていたコーヒーを開けて ぐびっと飲む。 甘いコーヒーは好きだけど、 微糖だの無糖は苦手。 そうしていると、階段を松井さんが昇ってくるのが 視界の端に見えた。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

255人が本棚に入れています
本棚に追加