255人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
「おとり捜査。よくあること。
たまたま刑事課で人間を調整できないからって
数日前に向こうから打診があった。」
丸さんは机に少しだけ体重を乗せ、
私の目線に合うくらいにする。
小さいころから知っている優しい視線。
「まぁ…事件の詳細は、また…なんだけど、
男女一組で、その現場に行って、見てきてほしいってのが
向こうのお願い。でも一度協力すれば次も頼まれると思う。
毎度連れていく女性が違うってなれば、向こうも警戒するだろうしね。」
言いたいことはわかる。
「危険は伴うよ。色々と。それは俺らの仕事全般的に…。
でも、市民の安全を守るためには、身を挺さなければいけないことも
たくさんある。」
丸さんは私から視線を外す。
きちんとした命令じゃないけど、
きちんとした命令だったら『嫌です』なんて言えないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!