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行事中の廉は、それはもう『かわいい』としか言いようがなかった。
保育所に入ったばかりの、
毎朝泣いていた頃なんて、すっかり忘れたみたいに、
未満児のクラス前に立つ先生の真似を一生懸命していた。
「あんな事、もう出来るんだね。」
行事を終えて、お迎えをして一緒に帰ると思っていたら、
「イレギュラーなことをすると、明日が怖いから…」と、
普段のお迎えの時間までそのまま。
お休みをもらっている諒介くんと4人で自宅まで向かう。
「本当だね…」
お姉ちゃんは、廉の成長を目の当たりにして、
少し泣いたみたいだ。目の下が赤くなっている。
「桃花さんも、しーちゃんやほのちゃんの行事の度に
涙腺やられた人だよね…きっと。」
諒介くんがここにいないお母さんに思いを馳せる。
「速水さんはすごく優しい顔をして見ていたくせに、
そんな顔していなかったよ…ってふりしそうだね。」
私も速水さんの昔を想像する。
「あの人…俺たちのこういう行事来てくれていたのかな?」
諒介くんは少し遠くを見ながら、少し寂しそうにつぶやく。
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