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人は声から忘れていくんだって…。
いつか何かでお姉ちゃんに教わったこと。
そうなんだ…って思って、それからずっと頭の片隅に残っているけど、
確かに、お父さんの写真は家の中、どこか探せばいつでも
出てくるから、写真の頃のお父さんの顔は思い出せるけど、
どんな声をしていたか…どんな風に手を握ってくれたか、
私たちに向けてくれた笑顔はどんなだったのか…
もう、思い出せずにいる。
4人でとぼとぼと歩いていると、
いつの間にかマンションの前に到着している。
「車…良かったら、このまま停めておいて大丈夫ですよ」
諒介くんが松井さんに声をかけているのを
数歩前歩く松井さんの背中越しに聞く。
ここから二人で出かけることだったことを思い出して、
急に緊張してくる。
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