秘められた思い

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何分たったか分からないけど部屋の中から声がした。 「…おかえり。昌広(まさひろ)」 「たっ、ただいま…」 ん?会話が普通だ。なんだ? 「ごめん、ちょっと寝てた。すぐに夕飯にしようか。」 「あ、いいよ。そのままで。」 「ふふ。今日は作ってくれんのかい?お前の料理はおいしいから…」 なんだか二人の関係性が昔っぽくないか? いや、昔を知らないけど。 ばあちゃんの記憶が昔に戻ったのか。 「会社は?順調かい? 悪かったね、継がせたりして…」 「いや、俺の意志だよ」 「そうかい。優しい子だね。 でもやりたいことが見つかればいつでもそっちに行きなね。父さん、頑固だから言わないけど。」 「か、…母ちゃん…。」 「昌広、夕飯作りたいけど…おかしいね。体がうごかな…」 「母ちゃん、いいよ。いいんだ。」 昌広会長がばあちゃんの記憶に合わせてる。 「煮物、食べさせたいのに…」 「今度……ね。またいつか……」 分からないけど!!! 俺は急いで廊下を走って玄関に向かった。 アッキーさんの家の鍵を掴んで雅臣の家に下りた。 どうなるか分からない。 でももし吉と出るなら… 煮物の鍋を持って15階にに上がる。 雅臣にはまた作れば良い。 何度だって作りたい。 鍋を火にかける。 皿は……1枚、ばあちゃんのっぽいのを見つけた。 忍者に使っていいのか聞きたいけど、寝ている恐れがある。 いや、泣いているかもしれない。 忍者なら静かに泣けるだろ?
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