秘められた思い

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俺の煮物でどうなるのか。 吉とでなくてもいい。 でも俺の煮物はばあちゃんのレシピ。 作り方は変えていない。 そこまで器用じゃないし。 煮物を皿に盛る。 部屋に入ったら?俺の存在って意味不明だよな…それでも…… 「…失礼します……。」 俺の登場に昌広会長は少し驚いている。 ばあちゃんは…見れない。 どうする? 「…もし良かったら食べてください。 お二人の知ってる味だと思います。」 ベッド横のキャビネットの上に乗せた。 昌広さんは煮物を見た後に俺を見た。 な、なんだよ…。 「…ありがとう。」 !!!! 絶対に俺の存在は可笑しいけど知らん顔して部屋を出た。 ばあちゃんはにっこりと微笑んでいた。 「…美味しそうな匂いだ。」 「やっぱり昌広作ってくれてたのかい。」 昌広会長は具を小さくしてばあちゃんの口に入れ、自身も一口食べた。 「……母ちゃんの煮物……」 「ふふっ。自分で作ったのに…おかしな子だね。」 その時、昌広会長がブローチに気付く。 キャビネットの上に俺が置いたもの。 「…これ。まだ持ってて……」 「前にくれたやつだよ。 初給与でね。これは棺に入れて持っていくよ。きれいだろ?」 「分かった。…俺、その場にいないかもな。」 「どこにいてもいいよ。 今、ここにいてくれる事が嬉しい。」 「母ちゃん、ごめんな。 俺、すっかり汚れたんだ…」 涙を流しながら懺悔する会長にばあちゃんは微笑む。 「いいんだよ。潰れかけの会社をここまで立派にしたんだ。みんな知ってる。 だから雅臣だって継いだんだ。」 あれ?ばあちゃんの会話が…現在の状況とかぶる。 でも会長にはどうでも良かったのか泣きながら感謝を伝えている。 俺はリビングで待つことにした。 もう平気だ。 ばあちゃんの煮物とブローチがあればあの二人はどこでも繋がっている。
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