秘められた思い

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忍者の存在は気になるけど、リビングで待っていたら会長が来た。 「もういいんですね?」 「あぁ。充分だよ。すまなかったね、ありがとう。」 本当はこの人は良い人なんだろう。 でも会社を大きくしていく内に色々な事が変わってしまった。 「あの今から…」 「警察に行くよ。……雅臣を頼むよ。 君と君の料理に惚れたのが分かる。 母の事も…見送ってほしい。」 「分かりました。 ばあちゃんの料理をこれからもたくさんの人に食べてもらいます。」 そう伝えると会長は笑った。 「私もいつかまた食べに行くよ。 …いつになるかは分からないけど。」 そう言って会長はエレベーターへ向かって行った。 アッキーさんは本当に寝てるのか?? 「明正!!!」 エレベーターの前で会長はアッキーさんの名前を呼ぶ。 「かぁちゃん、頼むぞ!ありがとな!」 そう叫んで下へ降りていった。 忍者はすぐにリビングに来て 「ビビった!何年ぶりかに名前呼ばれた。…なんかばーさんとの会話さ、泣けてきたよ」 起きてたんだ。 俺はふっと笑ってばあちゃんの部屋へ行く。 「和希…ありがとう。」 「ばあちゃん、俺分かるの?」 「分かるよ。煮物持ってきてくれた時にね。懐かしかったよ、あんな風に昌広と話せて。 もう後悔はないね。みんなのおかげ。」 ばあちゃんはこれからどうなるか分かっているような顔をしている。 きっと会長が逮捕されたらニュースで大きく報道されるだろう。 でもこの部屋はテレビがない。 「ん?あったよ?テレビ。」 リビングに戻るとアッキーさんはそう言った。 「外したんですか?」 「うん。ばーさんが見ないからって。」 もしかして見たくないのかもしれない。 「そうですか。」 「和希君て、すごいね。機転がきくというかさ。親父を呼ぶなんて考えもしなかった。でもそれが正解だった。」 正解だったと言われて安堵する。 「あ、弟を連れてきてもいいですか? あの…お世話になったので。」 「いつでもどうぞ。俺、ここではばーちゃんのそばで絵しか描いてないからさ。」 優希を会わせないとな。 「俺もヨッシー呼ぶかな。もうなんとなく迫ってるよね。」 ばあちゃんの最期の事だろう。 雅臣もきっとすぐに解放されてここに来られるだろう。 残った煮物は雅臣にと思ったけど、アッキーさんが食べたいと言うので置いて家に帰った。 さすがに今夜は家にいよう。
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