バラの花束をあなたに

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――――― 「おおっ!きよちゃん!邪魔するよ!」 昼過ぎに店でリフォーム案を考えているとクロさんが来た。 「あ、今、ちょうど内装を考えてて…」 「そうかい。そりゃちょうど良い!」 ん?丁度良い?? 「俺は設計図があれば完璧に作れるんだけどよ、やっぱりプロに頼むべきだよな! そしたらさ、たまたま居合わせたデザイナーっての? きよちゃんの店なら破格でやりますってさ。」 「そ、そうですか。」 店の常連さんにその職種の人いたかなと首を傾げる。 「もうすぐ来るからさ。 案を出しておいてな!じゃ!その名前…ん?ん?なんだっけ?さら…き…」 「如月です。如月遠矢(きさらぎとおや)」 目の前に現れた人物に目を奪われる。 クロさんがすまんと笑い、店を出ていくのは分かったけどお礼を伝えるのを忘れるほど20歳の頃の自分が甦る。 「き…如月さ…なんで?」 「久しぶり。和希。相変わらずキレイだ。」 20歳の頃、この人に夢中になっていた。 でもいつもどこか不安で幸せだと思った記憶はない。 いや、その不安もすべて幸せだと思い込みすぎた。 10も年上の相手に翻弄されて… 最後は結婚していると聞かされた。 「迎えに来たよ。やっと離婚したんだ。」 「え?…いや、困ります。 俺はもう如月さんの事は…」 そうだよなって困った顔をする如月さんは相変わらず色気がある。 でも心は全く動かない。 俺の心はあいつの優しい顔にしか動かない。
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