裏切りの真実。

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「こ、こりゃ、ひでぇー」 店を見たてらさんの一言目は予想がついたけど、改めて見ると本当にひどい。 「ど、どこから手をつけたら良いか。」 掃除が苦手だ。 ものすごーく苦手。 呆然と立ち尽くす俺を見て、てらさんは… 「ぎゃははは!!! きよちゃん、掃除は苦手かい? そりゃ、いいっ!流行りのギャップだ!」 てらさん、きよちゃんって呼んでる。 でもそっちのがしっくりくる。 てらさんの声できよちゃんってもう何度も聞いてきたから。 「あ、きよちゃんって癖だな、わりぃ。 でもきよちゃんに会いてえよ、俺は。」 偽りの姿でも愛されていたんだ。 誇りに思って良いのかもしれない。 「いつか。またいつかきよになりますよ。」 約束はいつ果たせるか分からないけど。 それでも必要とされてるなら嬉しい。 「まぁ、俺の願望は頭の隅っこにいれといて。 さぁてと…電話しねぇーとな!」 てらさんはどこかに掛けた。 誰にだろう。 「おぉ!俺。…あぁ、会ったよ。 いや、かずちゃん自身もキレイなんだわ、あぁ…あ?んーそうそう!ぎゃはは! じゃ後でな。」 サッパリだ。 でも確実に俺の名前が出た。 「あの…てらさん?」 「あー助っ人だよ。さ、はじめにまだ使える物をこの段ボールに入れようか。 俺、八百屋だぞ?野菜をキレイに並べるから整理くらい出来るぞ!ぎゃはは!」 頼もしい。 いつもはただ楽しくお酒を飲むおじさんだけど、今日はすごく仕事人みたいで格好いい。
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