六章 片隅に咲く花

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小高い丘にある教会。 その直ぐ傍にそびえ建つ白い建物。 聖マリアンナ女学院── 多くのクリスチャンを教え導くシスターの卵を育てるここ、修道院では毎週日曜日、ミサが行われ寄附を集める為のバザーが開かれていた。 教会の広場ではカラフルなテントが次々に張られ、女学生達が手作りした作品が朝から準備されている。 古着で作られた手提げや牧場から無償で提供された小麦粉で作られたクッキー。 バザーで扱われる全てが村民から援助された材料で賄われていた。 学院の花壇からは飾り付けの為にプランターごと移動される花達が次々に教会の周りに並べられていく。 一人の男はその様子を図書館の扉に寄りかかりながら眺めていた。 漆黒の髪に深い闇の瞳 白すぎる陶器のような肌が尚更その艶やかな黒を引き立てる。 男の名はグレイ・クロスフォード 所有していた多くの古書を学院に寄附した彼は、伯爵にしてこの学院の図書館の管理も任されていた。 彼が身につけている白絹のシャツの上に着込んだ黒いベストの胸元では、紳士さを際立たせる上品なフリルが揺れている。 そして丈の短なベストが厭味な程にスラリと伸びた長い脚を強調していた。
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