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……無傷(むしょう)か。
都のいたる所に居る雑妖……鬼と呼ぶにも足りない妖(あやか)しだ。
「―――天魔外道皆仏性」
晴明が小さく呪を唱えると、ち!と悲鳴じみた声を上げて影が消えた。
『きちんと修行もしていない身で、呪を使うでない!』
保憲の父、自分の師である賀茂忠行(かものただゆき)の声が脳裏に甦る。
「……使えるんだから仕方ないでしょう」
幼い自分を引き取って、我が子同然に育ててくれた恩人───彼の前では言えなかった言葉を口に出してみる。
そう……普通なら修行をしなくては分からない事、使えない術が晴明には難なく出来る事が多かった。
ほんの小さな頃から異界を見る事が出来ていた、自分。
だから、と晴明は思う。
忠行殿は自分を引き取ったのだ。
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