第1章

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都に有象無象の妖しが棲みついている事は、陰陽師でなくとも誰もが知っている。 妖怪だけではない。鬼や怨霊に生き霊、雑霊……様々な『念』が、とりわけこの内裏には渦巻いている。 日が落ちれば異界が開く。空間に満ちる波動が変ってくるのが分かる。 『念』はどうやらそれを感じる事の出来る者の傍に好んで寄ってくるようだった。 忠行や保憲ほどの力ある陰陽師ともなれば、それらに煩わされる事の無いよう常に自分の周囲に結界を張っている。 陰陽師としての修行もしていない自分には、それだけの技術はない。───が、別に構わないとも思う。 無傷(むしょう)のモノが寄って来るなら、それは自分がそれらに近いせいなのだろう。 異界の住人だった───母に、似て。
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