第1章

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この年は梅雨の月に入っても雨が降らないまま、一月以上が過ぎていた。地方では早くも旱魃の被害が出始めている。 原因は何なのか、星の動きに異常はないか、雨乞いをするにはいつがいいのか。 清涼殿からはひっきりなしに使者が遣わされてくる。 陰陽寮に天文生として入ったばかりの晴明は、急ぎ星の観測をせよと陰陽允(おんみょうのじょう)である保憲に呼び出された。。 観測結果から星の動きの予想をを出して。暦生は帰ってしまっているから暦の計算も自分でやってしまおうか、などと考えを巡らしつつ占星台から戻ってきた途端。部屋で待っていた保憲に抱きすくめられて衣を解かれた。 「保憲ど……」 咎める声は合わさった唇に呑み込まれる。 抵がう言葉はいつもほんの形だけ───これが初めてというわけではない。
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