第3章

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「逃げません」 「……お前な」 おおおおおおおん。 どう!と。再び落ちた雷を弾いた保憲が今度は膝をつく。その額から冷たい汗が流れた。 「……これ以上は受けきれん。逃げろ!」 「逃げません」 「そいつを置いて逃げろって言ってるんだ!」 「い・や・で・す」 抱きしめる腕にますます力を込めて晴明が言い返す。大きく息を吸った保憲が博雅にきつい視線を投げた。 うおおおおおおおんん。 内裏を覆い尽くすかのような呪詛の声。 「貴方は逃げて下さい」 「……あほうか」 晴明の声に保憲が呟く。黒雲を見据えたまま、ゆっくりと立ち上がった。
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