14人が本棚に入れています
本棚に追加
「逃げません」
「……お前な」
おおおおおおおん。
どう!と。再び落ちた雷を弾いた保憲が今度は膝をつく。その額から冷たい汗が流れた。
「……これ以上は受けきれん。逃げろ!」
「逃げません」
「そいつを置いて逃げろって言ってるんだ!」
「い・や・で・す」
抱きしめる腕にますます力を込めて晴明が言い返す。大きく息を吸った保憲が博雅にきつい視線を投げた。
うおおおおおおおんん。
内裏を覆い尽くすかのような呪詛の声。
「貴方は逃げて下さい」
「……あほうか」
晴明の声に保憲が呟く。黒雲を見据えたまま、ゆっくりと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!