第3章

22/23
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
自分は何の役にも立たない。『力』があったところで、使えなければ何にもならない。 押し寄せてくる高津波に抗する術があろうか。裂けていく大地から逃れる術があろうか。 彼我の差はあまりにも大きかった。 『力』から……『自分』から。逃げていた結果がこの始末だと。 どろどろと空に渦巻く瘴気を見上げて晴明が唇を噛んだ。 どん、という地響きと共に稲妻が走る。 「―――ッ!」 保憲の前方を半球に包んだ光の壁が雷撃を跳ね返す。 ───が、それと同時に保憲は後方に大きく飛ばされた。広縁の高欄に背中からぶつかって倒れこむ。 どこで切ったものか、保憲のこめかみを生暖かいものが伝う。 身体を起こそうとして立てた左腕に激痛が走り、肩口から倒れこんだ。 「───くそ」 正面きって闘える相手ではない事ぐらい、百も承知だったが。 稲妻に焼かれて爛れた拳を握り締める。 「逃げろッ!」 晴明に向かって叫んだ時、黒雲の中で閃く光がその目標を、博雅に変えた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!