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保憲が手の甲で目を覆う。
一瞬真っ白になった視界が、やがてゆっくりと戻ってくる。
「―――な……」
保憲が茫然と空を見上げる。
渦巻く黒雲の真ん中にぽかりとあいた穴……そこから青空が見えている。
おおおおおおお───がああああああ───。
もがき苦しむ声に見上げれば、額から黒く血のようなものを散らした雷公が喚いている。
───なんと―――なんと……わしを砕く、とは……お前は。
はっと視線を戻せば、もはや瓦礫と化した清涼殿に。
ひとり、晴明が立っていた。
烏帽子が飛んで流された髪。表情の消えた顔。
その瞳は猫のように縦に裂けた……異形の瞳。下弦の月のように細まったそれが金に煌く。
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