第4章

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『今宵の宿はいずれであろうな?』 鮮やかな紅葉の下、素性(そせい)法師が笑って問う。歌に秀でた法師は道真のまたとない友であった。 『白雲紅樹は、我ら旅人の宿であるよ』 大きく笑った道真は即座に返して歌を詠んだ。 満山紅葉破小機 況遇浮雲足下飛 寒樹不知何処去 雨中衣錦故郷帰 「歌など解さぬ無骨な私にも、その時貴方が詠まれた歌の美しさは分かり申した……あのような歌を詠んでいた貴方が―――なぜ」 雷公の周りを、ひらりひらりと眷族の悪鬼達が嘲笑いながら舞う。鬼から放たれた火球に忠行の脇の柱が燃え上がった。
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