14人が本棚に入れています
本棚に追加
『今宵の宿はいずれであろうな?』
鮮やかな紅葉の下、素性(そせい)法師が笑って問う。歌に秀でた法師は道真のまたとない友であった。
『白雲紅樹は、我ら旅人の宿であるよ』
大きく笑った道真は即座に返して歌を詠んだ。
満山紅葉破小機
況遇浮雲足下飛
寒樹不知何処去
雨中衣錦故郷帰
「歌など解さぬ無骨な私にも、その時貴方が詠まれた歌の美しさは分かり申した……あのような歌を詠んでいた貴方が―――なぜ」
雷公の周りを、ひらりひらりと眷族の悪鬼達が嘲笑いながら舞う。鬼から放たれた火球に忠行の脇の柱が燃え上がった。
最初のコメントを投稿しよう!