第1章

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散々に喘がされて掠れた声が零れる。 「分かってて来てるんだろう」 まだ染まった目元で睨みつける晴明を、保憲が軽くかわす。 「急ぐ仕事だからと呼び出したのはあなたでしょう」 「分かってて来てるんだろう?」 にやりと笑った保憲が同じ言葉を繰り返す。耳朶に寄せようとした唇から晴明が顔を背けた。 「仕事はこれからするさ」 情事の色を早くも消した声に、単を羽織り直した晴明がすいと立ち上がる。 「帰るのか?」 計算尺と紙を手に取った保憲が、卓に向かいながら問うた。 「身体を清めてきます」 「襲われるなよ……その格好は目の毒だ」 横目で見た保憲が小さく笑う。 朱を散らした胸の前を掻きあわせて、きっと睨んだ晴明が乱暴に御簾を払って出ていった。
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