キスの記憶

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東条主任と堀内さんとの食事会は十二月初旬に決まった。 堀内さんは相変わらず油断した頃に五階トイレに顔を出す。 私いびりをするのが趣味になっているらしい。 でも、何度か彼女と喋るうちに気づいたことがある。 まず、友達や同僚の受付仲間の話がまったく出てこない。 彼女が得意とするのは男性だけで、あまり同性の友達がいないのだろう。 それから、専門職女子に敵対心を抱いているようだった。 私も一応は専門職なので、私いびりはそこにも理由があるのかもしれない。 けれど私も単純なもので、意外と寂しい人なのではと思うと、以前ほど彼女が嫌ではなくなっていた。 皆川氏からは、食事会まであまり彼女に余計なことを喋らないよう指示されていた。 あの夜、帰りの車の中で言われたものだ。 私が間抜けなせいもあるだろうけれど、きっとそれだけではなく、“彼のメリット”に関係があるのではということは薄々感じていた。 だけどそれが何なのかはさっぱり分からない。 いずれにしても、堀内嬢の追及をのらりくらりとかわすのも限界だったので、当日を迎えた私はほっと安堵していた。
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