キスの記憶

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「皆川佑人です。東条主任のことは尊敬する上司だといつも聞かされているので一度お目にかかりたかったんですよ」 皆川さんが喋っている間、堀内さんの様子を窺った私は思わず二度見してしまった。 ギアチェンジしたみたいに、さっきよりフェロモンが倍増しているのだ。 小首を傾げ、一語一句聞き漏らすまいというように目をキラキラさせて皆川さんを見つめている。 恐ろしい……。 恋人が隣にいながら、他の男性も魅了しようとするとは。 東条主任は気づいているのかいないのか、人当たりのいいポーカーフェイスなのでわからない。 皆川さんは彼女をどう感じているのか、淡々と問答している。 いつもの嫌味臭は封印しているらしく、落ち着いた大人の男といった風情だ。 「どこで出会ったんですか?」 「バーですよ」 語りは皆川氏にまかせ、ひたすら食べて演技から逃げていた私の肩が、この問答でヒクッと震えた。 なぜそこだけ真実を? 横目で皆川さんを睨むと、彼はニヤリと笑い返してきた。
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