運命の恋はひとつだけ

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会場は中央にビュッフェメニュー、窓沿いにはテーブルと座席が用意されていて、寿司店や有名料亭の出店もある。 「わぁ、すごく豪華ですね!」 「うん。三年前に僕がこのセミナーを引き継いだ時、課長が惜しがってたな」 隣の主任に笑顔で話しかけると、穏やかな目が笑いながら見下ろしていた。 「仕事中なのに申し訳ない感じ」 でも、そうやって自分を盛り上げてみても、せっかくの役得なのに、香子さんの存在を知ってしまっては心はどこか濁ったままだ。 壇上で主催企業の幹部挨拶が始まったので私たちは口をつぐみ、ウェイターから渡されたグラスを手に乾杯の合図を待った。 チラリと横目で香子さんの位置を確かめる。 彼女がどんな人物で、皆川さんとはどんな関係なのか。 失恋確定だと自嘲するなら知ってどうなる訳でもないはずなのに、気になって仕方がなかった。
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