運命の恋はひとつだけ

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皆川さんの職務はもうすぐ終わる。 彼の口ぶりからして、順調に最終段階に進んでいるのだろう。 それが堀内さんの不在と関係があるのか考えながら食べていた私はしばらくしてふと、茉由子の箸があまり進んでいないことに気づいた。 「茉由子、食欲ないの?」 「そんなことないよ」 どことなく声に張りがないし、視線も下を向いたままだ。 「何かあった?」 私の問いかけに茉由子はしばらく口をつぐんだあと、ボソリとつぶやいた。 「内山さんのことだけどさ……」 そういえば年末以来、自分のことに気をとられてばかりで茉由子のあの件をすっかり忘れていた。 あの時はあんなにはしゃいでいたのに、今の茉由子の表情には元気がなく、話の成り行きを察した私は先を促せなかった。
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