運命の恋はひとつだけ

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「ナツには報告しなくちゃね」 でも茉由子は空元気のような笑顔を浮かべて話し始めた。 「公募で選ばれたんだって。広島に」 内山さんが広島を希望している理由を迫田くんから聞いている私は、すぐに反応できなかった。 でも、茉由子はすでに理由を知っていた。 「迫田から聞いたんだけど、彼、広島に忘れられない人がいるんだって。大学時代の同級生らしいの。事情があって一緒になれなかったって」 茉由子はため息をついて「ごちそうさま」と手を合わせると、箸を揃えて置いた。 「その人が待ってくれてるとは限らないし、フラれて出戻るかもしれないって迫田は言うんだけど」 そこで茉由子は言葉を止め、頬杖をついて、窓の外のビル群の隙間から覗く空を眺めた。 合コンの一目惚れとはいえ、かなり本気だったんだと思う。
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