運命の恋はひとつだけ

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「……でもさ。連絡を絶って何年も経つのに、それでもその人に会いに行くんだよ。転勤までして覚悟決めてさ。入り込める訳ないじゃん。太刀打ちできないよ」 茉由子には申し訳ないけれど、あの時の内山さんの少し切なげな笑顔を思い出して、そんな恋があるんだなと眩しく感じた。 「運命の恋ってひとつだけ。離れようが何だろうが、出会ってしまったらもうその人しかいないんだよ。広島に決まったのも、運命なんだよ」 自分に言い聞かせるように結論づけると、茉由子は少し赤くなった目で笑った。 「いつかパーッと飲みに行こうよ。ナツの禁酒令が解けたら」 「うん。行こう行こう」 禁酒令が解けたら──それは彼が去ってしまう時。 わずか数ヵ月の間に二度も失恋するなんて新記録だと、自分を茶化して笑顔を作る。 でも、心はしくしくと泣いていた。
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