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東条主任とはそれからもう少しだけ飲んで、一緒に帰りの電車に乗った。
皆川さんの駅をやり過ごし、先に降りる主任を見送ると、私は次の駅で降りて逆方向の電車に乗った。
皆川さんの部屋に行くためだ。
今のこの衝動に従わなければ、もう二度と勇気が出ない気がした。
でも、駅を出て勢い任せにしばらく歩いたところで、やっぱり急に押し掛けるのはまずいんじゃないかと、小心者の私は常識から逸脱していることが急に気になってきた。
美人ならば突飛な行動も様になるのかもしれないけれど、私は同じようにはならない。
傍目から卑屈だと正論をぶたれようが、過去の経験から現実は本人の骨身に染みている。
私には彼の部屋に行く目的があった。
それが正しいと言えるのか分からない。
でも、それが自分に致命傷を与えることだけは分かっていた。
それでも、行きたい。
後で後悔しないように慎重に行こうと、私は気持ちを落ち着けて携帯を取り出した。
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