そこに愛がなくても

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「皆川さん……?」 彼はこちらに背中を向け、ベッドから下りた。 「あなたの誘惑は十分魅力的でした。十分すぎるぐらいに」 サイドテーブルの眼鏡を取った彼に寝室を出ていこうとしている気配を感じ、私はワンピースで胸元を隠しながら慌てて起き上がった。 「待って……!」 私はそんな講評が欲しいんじゃない。 「私、後悔しないって言いました」 「あなたは経験が少ないから流されているだけです」 「流されてません!だって私は」 “皆川さんが好きです” 喉元まで出かけていた告白は、背中越しの彼の次の言葉で凍りついた。 「僕が後悔するからです。すみません」 彼の言葉が何度も頭の中でこだました。 私が音を上げないから、彼がたまらずストップをかけたのだ。 やっぱり“女の私”は要らなかった? 香子さんがいても何人もの女性と付き合ってきたなら、誰だって抱けるはずなのに。
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