そこに愛がなくても

24/28
前へ
/28ページ
次へ
「来週、人事からあなたと東条主任に呼び出しがかかる予定です。その日が僕の仕事の最終日です」 おそらく東条主任の前で彼は私から去ってみせるのだろう。 “彼はあなたに手を差しのべるでしょう” すべて最初に彼が決めた予定通りに。 「部屋を出ていますから、服を着て下さい。送っていきます」 「今日は自分で帰ります。まだ時間が早いので大丈夫です」 早く一人にならなくては。 そうでないと──。 「最後だから自分で帰ります。一人立ちしないといけないから」 彼はそれ以上何も言わなかった。 帰り道、雑踏の中で、私は歯を食い縛り一人で泣いた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1596人が本棚に入れています
本棚に追加