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「来週、人事からあなたと東条主任に呼び出しがかかる予定です。その日が僕の仕事の最終日です」
おそらく東条主任の前で彼は私から去ってみせるのだろう。
“彼はあなたに手を差しのべるでしょう”
すべて最初に彼が決めた予定通りに。
「部屋を出ていますから、服を着て下さい。送っていきます」
「今日は自分で帰ります。まだ時間が早いので大丈夫です」
早く一人にならなくては。
そうでないと──。
「最後だから自分で帰ります。一人立ちしないといけないから」
彼はそれ以上何も言わなかった。
帰り道、雑踏の中で、私は歯を食い縛り一人で泣いた。
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