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“江藤です。今から行っていいですか?”
前置きも細部も飛ばしたメールを道路脇で打ち、何も考えないようにして送信ボタンを押す。
香子さんと一緒なのではという不安を脇におしやり夜空を見上げながら返信を待っていると、まもなく着信音がした。
“どうぞ”
何も聞き返してこない一言だけのメールはいつもの素っ気ない彼らしく、それでいてまるで私からメールが来るのを予想していたかのようにも思えた。
画面を見つめ、ほっと息を吐く。
勇気と、不安と。
勝つのはどちらだろう。
冬の空気に白い息が散っていくのを、私は少しの間眺めていた。
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