彼の“例外”

6/31
前へ
/31ページ
次へ
二月の中旬にさしかかる頃、一度は下火になっていたインフルエンザが猛威をふるい始めた。 他部門入室禁止のうちの部署にも誰か一人がウイルスを持ち込むと、狭い部屋だけに次々と感染者が出た。 例年、私はまったく風邪をひかない。 あまり自慢にはならないけれど、予防接種をせずに丸腰で臨んでもインフルエンザにかかった記憶はここ数年ないぐらいだ。 でも、最近は少し身体に鞭打ち過ぎたのかもしれない。 ある朝、あまりの身体のだるさに私は起き上がることができなかった。 どこに片付けたのか思い出せないぐらい使用頻度の低い体温計を這うようにして探し出し、熱を計ると四十度。 ベッドに突っ伏し、体力を過信して予防接種をしなかったことを激しく悔やんだ。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1690人が本棚に入れています
本棚に追加