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二日後、私は夜に控えた皆川さんとの約束に間に合わせるため、せっせと仕事に励んでいた。
仕事というより、作業と呼んだ方が適当かもしれない。
月末が近づくと、所帯三十人の出張精算処理が集中してくる。
本来の企画の仕事の他に、私はこうした雑用を幾つも抱えていた。
うちの部門には事務職がいない。
社長の鶴の一声で部門が創設された時、精鋭の社内公募メンバーということに重きがおかれて、集団には必然的に発生する“雑用”は考慮から漏れていたらしい。
それでも営業のように膨大な事務処理が発生する訳ではないし、三十人という小さな所帯なので、その時々の一番若い社員が雑用をこなしてきた。
といっても、創設から十年のうちのほとんど──ここ七年が私だ。
入社四年目を迎えた時、めったに人員補強がない中でようやく待望の新入社員がやってきた。
でも、私が雑用から解放されることはなかった。
なぜなら、その新入社員が男だったからだ。
電機メーカーは体質が古いとよく言われるけれどここでもそうで、女性の活用が進む一方で“雑用は女”という根っこの意識は変わらない。
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