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夕方には差しあたっての雑用はすっかり片付いてしまった。
怒りに任せると仕事ははかどるものらしい。
時刻は六時前。
“仕事が終わったらメール下さい”
メールしなきゃいけない?
いや、まだ早い。
というより、一人でいたい。
二度目のドタキャンは許されないと思いつつも、何とか先延ばしにしたい私は深夜に自宅で取り組むつもりだった企画書を開いた。
でも、仕事の神様は意地悪だ。
こんな時に限ってまずまずのアイデアが降ってきて、二時間後にはほぼ仕上がってしまった。
メールしたくない。
皆川さんに会いたくない……。
何とか逃げる手段はないか考えていると、バッグの中で携帯が唸った。
もしや……。
悪い予感の通り、メールの主は皆川氏だった。
“仕事は終わりましたか?”
彼の受け答え同様、メールは簡潔にたった一言だ。
でもそれは私に嘘をつかせない威力があった。
思わず天井を見上げる。
彼は神通力で見えているのだろうか?
“終わりました”
鞭で打たれたように項垂れ、正直に返信した。
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