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仕方なくパソコンをシャットダウンし、気の進まないままのろのろと更衣室に向かう。
ロッカーに作業着をしまってから、さて彼の自宅と言われてもどこに向かえばいいのか知らないなと考えた。
返信してから五分は経つのに、皆川さんからは反応がない。
そこで私は急に勢いを取り戻した。
そうだ。返事がないし場所も知らないんだから、仕方なく帰ったことにすれば……。
大急ぎでコートを羽織り、更衣室を出た。
ところが、守衛さんに挨拶して駅まで一気に駆け抜けようとした私の足は、通用口を出たところで急ブレーキがかかった。
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
振り返ると、通用口にもたれていた皆川氏がゆっくりと身体を起こした。
微笑を浮かべた顔に「捕獲」の文字が見えるのは気のせいだろうか。
「……お疲れ様です」
悄然と頭を下げる。
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