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諦めてメモ山のシワを伸ばし、積み直す。
かなり前から出張精算は電子化され、個人で入力できるようになっているけれど、一部のメンバーは私任せだ。
それに、印字した伝票を経理部に提出しなければ精算処理が始まらないので、私は毎日部内から集めた伝票を持って経理部まで足を運ばねばならなかった。
一つ一つの用事は些細でも、“塵も積もれば山となる”で、本業が忙しい時は結構辛い。
精算入力画面を閉じ、仕方なく路線検索画面を開いていると、また声がした。
「江藤さん、すみませんけどお願いします」
今度は三つ下の後輩、永田君だ。
彼は私の書類の山のてっぺんに入力済の精算伝票を置いた。
「伝票はあそこの箱に入れて。机に置くと資料に紛れちゃうから」
虫の居所が悪かった私は可愛げないなと思いつつも、共有ゾーンに置いてある伝票箱を無愛想に顎で指した。
私の机にポイポイと置いていく人が後を絶たないので、時折、資料に紛れて数日前の伝票が出てきてぎょっとすることがあるのだ。
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