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「や、だって今、江藤さん席に居るし直接と思って」
箱に入れてくれって何回も言ってるんだからその通りにしてよ!と怒鳴りたくなるのをぐっと我慢して、渋々受け取る。
「今日は無理なんですけど、暇な時は手伝うんで言って下さい」
「ありがとう」
永田君の足音が離れると、東条主任が席にいないのをいいことに、キーを乱暴に叩いた。
主任は経営企画室との打ち合わせで、しばらく帰ってこない。
永田君は自分で入力してくれているし、親切で言ってくれてるのはわかってる。
でも、本来は彼が担うはずの仕事だったと思うと、“手伝う”とか“今日は無理”という悪気のない言葉にいちいち苛々してしまった。
無理な日でも、私は本業を後回しにしてやらなきゃいけないんだ、と。
きっと私、カルシウムが足りてないんだ。
後でミルクたっぷりのコーヒーを買いに行こう。
ようやく路線検索を終えて精算入力に作業を戻していると、ミルクたっぷりのコーヒーよりも甘い、東条主任の声がした。
「ただいま」
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