1617人が本棚に入れています
本棚に追加
「部長と行くと難しい話が多いから疲れるんだよ。部長、技術出身でしょ?僕の頭は超文系だから」
「私もです」
「だよね?マニアックな話になるとお手上げなんだよ。会話が一日も持たない」
そんな話をヒソヒソやっていると、副本部長が通りがかりに封筒を私の机に軽く投げるようにして置いていった。
「江藤さん、それ、届け物よろしく」
「はい」
煙草休憩に出掛けるらしい副本部長が部屋を出ていくのを見届けると、口をつぐんでいた私たちは顔を見合わせて笑った。
「じゃ、そういう風に話を持っていくってことで」
彼はそう言って顔を引っ込めた。
まだずっと先のことなのに、顔がにやけてしまう。
主任は男ばかりでしかも若手が少ない部門で孤立しがちな私を気遣って、よくこんな風に見学出張に同行してくれる。
そんな東条主任の前で、不平不満を見せたくない。
少しやる気を取り戻した私はくしゃくしゃのメモ山を掴み、さっきよりも張り切って精算入力を再開した。
最初のコメントを投稿しよう!