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でも二時間後、私は内心焦りに焦っていた。
あの後、副本部長の海外出張申請が入り、急を要していたので受付終了間際のツーリスト部に駆け込んで航空チケットの手配をしたりとバタついていて、作業が予定通りに捗らなかったのだ。
こんなことは日常茶飯事だけれど、約束がある日にこれだと泣きたくなる。
その間に皆川さんから入ってきたメールには、“七時に通用口で”と書いてあった。
今日はうちの社に来ているのだろう。
今、時刻は六時半。
机の上は未処理のものがまだ散乱していて、間に合うかどうかはかなり危なかった。
「伝票処理やってるの?」
東条主任が私のパソコン画面を覗きこんできた。
「……はい」
「交通費精算は各自で入力するんじゃなかったっけ?肩代わりしないで突き返さないと」
「はい。でもこれは副本部長の分で、もうすぐ終わります」
東条主任の指摘通り肩代わりしていた決まり悪さから、私は少し言い訳した。
副本部長はこの秋に異動してきたばかりの人で、前の部署で秘書がついていた習慣が抜けず、私を秘書代わりに使っていた。
これには誰も口が出せないのだ。
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